Motobi 125 Ardizio Standard 入荷。

Motobiと言えば125、175、250などの水平4ストロークモデルが有名ですが、創業当時は2ストロークエンジンのみのメーカーでした。最初のモデルバレステリーノから水平シリンダーのデザインとスクエアボックス形状のフレームを採用し、2年後にはモトビのアイデンティティーとも言えるエッグシェイプの水平シリンダーデザインの2ストローク125エンジンをプレスバックボーンタイプのフレームに搭載したArdizioを発表というのが初期モトビの流れですが、この個体は当時のArdizioの中には無いパイプフレームを使った唯一のモデルで1956年式のModel "Standardになります。

このStandardというモデル、店主もその存在を最近まで知りませんでした。
初めて見たのはコロナ禍前の2019年のイタリア、もしかしてこれはカスタムで作られたのか?と思うほど違和感があったのを覚えています。その車両がこちら。

あまりにコンディションが良くなく購入は躊躇したのですが、その後どうしても気になってもう一回見たいと思っていたところこちらを発見、即購入、輸入となった車両です。
入荷後色々と調べてみるもなかなか資料が無く、どういった車両なのか不明でしたが、自分のコレクションの当時のカタログの中にこのモデルを見つけやっとこれが何だったのか分かりました。

それがこのカタログ。1956年となっていますが、この時はまだ4ストロークモデルはは発表前で予想図とエンジンのみの紹介の時期、左上にその車両が載っています。

ですが、それ以外の同年のカタログにはこのモデルはあっても他と同じボックスフレームに変わっていてこのデザインの記載はなく、理由は不明ですがごく少数のみが作られたモデルの様です。

と、とても謎の多いこのモデルですが詳細をご紹介。

エンジンは54X54mmの123cc。エッグシェイプの水平シリンダーと繋がった丸いクランクケースが特徴です。キャブレターはDellorto UA18A フロートの下のドレインパイプ付きのオイル受け皿があるのがモトビならではの装備です。
そしてこのバイクのもう一つの特徴はこのエンジンを上1点と下2点の3点ラバーマウント支持という当時としては高級な仕様になっていることです。
当時の125cc2ストロークバイクというと日常の足に使われる実用車というのが一般的でそこにラバーマウントを採用するというのはなかなかに凝った造りです。

チェンジペダルと同軸のキックペダルも初期モトビの特徴で4ストロークの初期Catriaなどまでにも繋がるデザイン。

このモデル独特の異様に大型のツールボックス。後にも先にもこのモデルだけのデザインです。

こちらも特徴的なシンプルなヘッドライト周り。スピードメーターの装着はもとよりライトスイッチさえも想定されていないミニマムなデザインです。

モトビのデザインの中では異端な上側にエラの張ったタンク。モンディアルなどに似たデザインがありますがその辺りを意識したデザインなのでしょうか。作りの良いメタル製のタンクキャップは社外品かもしれません。

シートはオリジナルではなく当時の社外品がついています。

フロントフォークはArdizio Turisumoと同じですがブレーキは一回り小さなコニカルハブのブレーキが使われています。リムはリブ付きのアルミリムと高級仕様。多分これは後に変えられたと思われます。

このモデルのみの2本のパイプで構成されるフレームのショット。ノーマルのボックスタイプのフレームに比べると簡素な作りが足回りの構成も含めて軽量な車体作りを目的にした感が伺えます。
2ストロークモトビは先にも説明したように当時の125cc 2stとしては車体周りも凝った作りで、個性的なエンジンも相まって一般的な125とは違い意外に重厚感のある走りが特徴です。その重厚感がこのフレームでどう変わるか、とても興味深い車両です。